K. Inoue
(更新)
「英語習得にはシャドーイングがおすすめってよく聞くけど、どうすればいいの?」
「とりあえずシャドーイングをやっているけど、やり方があっているのかわからない」
このような疑問や不安をお持ちの学習者は多いのではないでしょうか。
英語学習の世界でとてもよく耳にする「シャドーイング」ですが、しっかりとした考え方とやり方を知っておかないと、必ずしもうまくいくとは限りません。
今回はそんな「シャドーイング」について、考え方からやり方、おすすめ教材まで解説します。
この記事を読んで、英語力アップに効果絶大のシャドーイングをさっそく今日から試してみてください。
シャドーイングとは「聞こえてくる英語の音声をマネしながら声に出して読んでいく」訓練法です。
英語音声を流し、聞こえてきた英語そっくりにマネしながら、後から付いて読み上げていきます。
おおむね2、3語遅れて読み上げていくのですが、影(シャドー)のように付いていくような様子からシャドーイングと呼ばれています。
「言語専門家の会が、日本の間違った英語や奇妙な英語を修正しようと試みている」
出典:Researchers Try to Fix Japan's English
シャドーイングはもともと同時通訳の訓練法として用いられていましたが、その効果から、今では学校の授業や一般の英語学習者向けトレーニングの現場でも広く取り入れられています。
ただ、そのことで「シャドーイング」という言葉だけがひとり歩きし、「とりあえずシャドーイング」くらいの認識で「なんとなくやっている」だけの人も多くなっている感は否めません。
シャドーイングをおこなう際には、「なんとなく」ではなく、しっかりとした考え方・姿勢を持って、より効果的にできるようになることが大切です。
そもそもシャドーイングをすれば、どのような効果が得られるのでしょうか?
一つは「リスニング力」の向上です。
スクリプト(音声原稿)を見ずにおこなうシャドーイングでは、聞こえてくる音声をまず聞き取ることが絶対条件。当たり前のことですが、聞き取ることができない英語を即座に声に出して言うことは不可能だからです。
逆に言えば、シャドーイングができるようになるということは、リスニング力が身に付くことの証でもあるわけです。
しかしここで問題になるのは、何をもってリスニング力が身に付くと定義するかです。
単純に「音を正しく聞き取る」ことができたとしても、「何を言っているのか分からない」のであれば、それは言語能力としてのリスニング力と言うことはできません。
「音だけは聞こえた。けれど単語の意味も文法もよく分からないから、文全体として何を言っているのか分からない」のであればコミュニケーションは成立しないからです。
音として英語を聞き取りつつ、「その英語がどのような意味内容を表しているのかを語順通りに理解」できてはじめて実用レベルでのリスニング力が身に付いていると言えます。
つまり「聞こえれば良い」のではなく、「理解しながら聞き取る」ことをシャドーイングにおけるリスニング面強化の最大のポイントに置くことが重要なのです。
これを忘れて、やみくもに音ばかりを聞こう聞こうとしていると遠回りになりかねません。
事実、シャドーイングを継続して音はしっかり聞こえるようになっているのに、あまり実力に繋がっていないと感じる学習者の方は少なくありません。
そのような方は、シャドーイングをやるよりも、もっと前段階として単語や文法を学び、スクリプトを見直して英文を理解することから始めた方が効果的です。
「英語を英語の語順のまま理解」するためのポイントや学習法は、以下の記事で紹介しています。
二つ目は「スピーキング力」の向上です。
スピーキングは4技能のうち、リスニングと並んで、音声と直接的に関わる重要な技能です。
シャドーイングでは素材となる英文を実際に口にするため、結果的に「英語を話す力」も身に付けられることになります。
模範となる音声を忠実にマネしながらおこなう訓練であるため、音の連結や消失、強弱やリズムなど、文全体として英語らしい英語の音を総合的に身に付けることができます。
特に発音矯正としてシャドーイングが果たす役割は大きく、音声を頼りに可能な限りネイティブの呼吸に近づくことを目指すことで、「伝わる発音」に繋げるられることは日本語話者にとっては最大のメリットと言えるかもしれません。
日本語と英語は、数ある言語の中でも発音面においては、互いに対極に位置するほどかけ離れており、伝わる発音ができないがゆえに英語に挫折した経験を持つ方も多いことでしょう。
外国語学習において最も大切な要素は「発音」なのです。
シャドーイングは、物理的に音声を使わない「リーディング力」と「ライティング力」も高めてくれます。
音読法の一つであるシャドーイングが「音を使わないリーディングとライティングの力まで高めてくれるってどういうこと?」と思われるかもしれません。
実は、リーディングでもライティングでも音声は必須なんです。
今この記事を読みながら、口は閉じていても頭の中では正しい日本語の音声が再生されてはいませんか?
普段会話するときには正しい日本語の発音をするけれど、読むときにはでたらめな発音が頭の中に流れてくる、なんて人はいないと思います。
メールを書くとき、その文面を書きながらいい加減な発音が頭の中で再生されていますか?
声には出さなくても、脳内では普段しゃべるときと同じように、ネイティブの日本語を発音しているのではないでしょうか?
つまりある言語を身に付けている人なら、読むときも書くときも、それをおこなっている最中は正しい音が無音ながらもしっかりと再生されているものなのです。
その意味で、シャドーイングを通じて音声を強化することは、4技能全てを向上させる効果をもたらしてくれると言うことができるのです。
もちろん、先ほどリスニングのところで述べたのと同様、意味が分からないのにただ音だけ延々と発音していても良くありません。
音と意味内容の理解を結び付けた訓練をすることを忘れないように注意が必要です。
ではここからシャドーイングのやり方についてご説明していきますが、まず心構えとして、シャドーイングは比較的難易度の高い練習法であることを知っておいてください。
もともと同時通訳の訓練として用いられていたことからもそれは分かると思います。
ですから「シャドーイングが良いらしいぞ」と聞いて安易に手を伸ばしても、その難しさゆえに逆に諦めの気持ちが生まれてしまっては意味がありません。
挫折しないよう、「なんとなく」ではなく、以下の手順に沿ってしっかりとステップを踏みながら実践してみてください。
特に初級者の方は、シャドーイングを始める前に以下の2つの土台作りから始めてください。
また中級者以上の方でも、素材の英文を聞いてすぐに理解できない場合は、このステップを必ず踏むようにしてください。
まずは素材の英文をしっかりと理解しましょう。そこで単語や文法の分からないところをつぶしておきます。
「読んで理解できる」状態にしておくことが重要です。
リッスン&リピートやオーバーラッピングなどの音読法を活用し、ある程度発音できるようになっておくことが理想的です。
音読法の詳細については、以下の記事を参照してください。
「どうしても時間が取れない、なるべくすぐにシャドーイングを始めたい」という方も、できる限り事前の音読に取り組んでおいた方がより効果が期待できます。
最初からシャドーイングに取り組む際には、すぐに挫折してしまわないよう、あまり背伸びしなくてもいいくらいの簡単な素材から始めてみてください。
シャドーイングは、音読トレーニングの総仕上げ的な位置づけでおこなうことで最も効果が得られます。
もちろんシャドーイングだけでも多くの効果は得られますが、その他の訓練との掛け合わせで何倍にも力が膨れ上がります。
だからこそ上記②のようなステップを大切にしたいのですが、一方では、シャドーイングはその難易度の高さから、とてもチャレンジしがいのあるトレーニングでもあります。
基本単語や文法を網羅し、ある程度音声にも慣れた中級レベル以上の方にとっては、初見の素材を使ってやってみるのも良いでしょう。
今の実力の確認もできますし、最初はうまくできなかったものが次第に上達していく喜びも感じられることで、さらにやる気が上がっていきます。
シャドーイングに使用する素材は、大雑把に言って「音源とスクリプトがあること」という条件さえ満たしていれば「自由」です。
ご自身のレベルや目的、好みなどに合わせて必要なものややり易いもの、やってみたいものを選びましょう。
たとえば初級者の方には、文法の例文集や簡単な会話集など短めのものがおすすめです。慣れてきたら子ども向けの本など、ストーリー性のあるものが楽しくて良いでしょう。
中級レベル以上の方は「TED」スピーチや、ビジネスマン向けのシャドーイングテキストなども有効ですし、「TOEIC」の公式問題集を使えばTOEIC対策にもなります。
後で詳しくご紹介しますが、個人的には「究極の英語学習法 K/Hシステム 入門編」(アルク)という教材を使い倒しました。
音源を使う際、スピード調節機能がついたプレーヤーがあると、速すぎる音源の速度を落としたり、逆にスピードを上げてチャレンジしたりといったアレンジが可能なのでおすすめ。
続いて、シャドーイングの素材と、どれだけ練習するべきかの目安をご説明しますので参考にしてください。
初級者の方は、中学レベルの英文がたくさん収録されたものを選びましょう。
はじめは長文ではなく、文法の例文集のように短文が豊富に収録されたものが良いでしょう。まずは短文から英語の基本的な仕組みとリズム感を鍛えることが大切です。
長文にチャレンジする際には、1回のシャドーイングにつき、30秒から1分以内程度で読み切れるくらいの長さのものがおすすめ。たったそれだけでも100単語以上の文量にはなりますので、たとえば物語なら段落や話の区切れごとに進めていくというやり方ができます。
中上級者の方は、まずは1分から長くても3分程度を一つのまとまった素材として利用できるものから始めてください。3分は短そうでも実はかなりの文量になり、意外とチャレンジのし甲斐があります。
長いスピーチを利用する場合も、全部を一つの素材とするのではなく、導入部分だけとか、ある特定の話題の部分だけという具合に、なるべく細切れにして使うようにしてください。
ただ、素材の時間のみが大切というわけではありません。
TOEICのリスニングのように、1題あたりの時間は短くても、内容やレベルによって、中上級者でも十分に有効な訓練素材となるものはあります。
シャドーイングでは時間だけにこだわらず、内容と質に目を向けることも大切にしてください。
慣れて実力がついてきたら、5分以上あるものにチャレンジしてみましょう。
特に上級者にとっては、長いスピーチの模倣は英語学習における最高の快感の一つとなるでしょう。
(筆者は、15分以上のスピーチを正確にシャドーイングできたときなどは嬉しくてニヤけてしまうタイプです)
詳しくは後述しますが、ネイティブ(言語問わず)の日常的な言語使用量の観点から、一日に1時間から欲張って2時間ほどのシャドーイング(音読)時間を確保できることが理想的です。
もちろん1~2時間ぶっ通しということではなく、すき間時間などに少しずつ行い、合わせてそれくらいの時間が確保できれば良い、という目安です。
ただ、英語学習にコミットできる学生でもない限り、上記の時間を毎日確保するのは、現実的には相当難しいと思います。
そこで、最初のうちはとりあえず15分をシャドーイングに充てられるようにしてみてください。
どれだけ忙しくても、15分くらいなら必ず捻出できるはずですから、絶対にこれだけは確保しましょう。
習慣的に15分確保できるようになったら30分、それができたら1時間という具合に、ご自身の日々のルーティーンに取り入れるシャドーイング時間の幅を少しずつ広げていってください。
そうすれば無理なくシャドーイングの習慣化が可能になるはずです。
そしてもう一つ大切なことは、回数です。
たとえば1分間のシャドーイングを15回おこなうのと、15分間のシャドーイングを1回おこなうのとでは、前者の方が高い学習効果が得られます。
なぜかというと、言語習得の基本は「反復」だからです。
初級者ほど回数を多く重ねることが大切ですが、その意味でも最初は短めの素材を使うことに意義があるわけです。
長めのシャドーイングは確かにチャレンジングではありますが、中級者以上でも最初から3分を超えるようなものをオススメしないのはそのためです。
まずは短いものを、正確に聴き取れて正しい発音で全て暗唱もできて、いい加減飽きてつまらなくなってしまったと思うくらいに完璧にする。
それができてこそ、長めの文に移行する価値が生まれると思ってください。
そのため、ほとんど回数を重ねられない15分以上のシャドーイングは技能向上の訓練というよりも、ある程度英語力を身に付けた人がそれをより洗練されたものにしていくためのもの、というイメージになります。
これらを踏まえてシャドーイングスケジュールを組み立ててみましょう。
【例1】
1分間の素材×4つを準備
計60分で60回
【例2】
3分間の素材×2つを準備
計60分で20回
素材の時間が長い場合には、例2のように用いる素材の数を少なくし、セットを増やすことで時間と回数の両方をなるべく確保するようにしてください。
実際に使用する素材を用意したら、ここまでのことを押さえた上でシャドーイングに取り掛かってみましょう。
やり方はシンプルです。
音声を流し、聞こえてくるままに、だいたい2〜3語遅れて声に出して読んでいきます。
「言語専門家の会が、日本の間違った英語や奇妙な英語を修正しようと試みている」
出典:Researchers Try to Fix Japan's English
このとき、スクリプトは見てはいけません。
すでに述べたように、音だけにこだわるのではなく、意味内容もしっかりと頭の中で理解しながら聞き、声に出していきます。
はじめのうちはこの同時進行が難しいので、たとえば最初の10回は音だけにこだわる。それ以降は意味内容も意識に加えていく、という具合に2段階で進めていくと良いでしょう。
それでも難しい場合は、スクリプトを見ながらやるなど、レベルを下げたアレンジを加えても構いません。
何回やればOKということではなく、「もう何度やっても音も意味内容もばっちり」と言えて、しかも暗唱できるくらいまでやり込んでください。
上述のように、2〜3回やって終わり、ということには絶対にならないように、何回も、何時間も、何日も続けることが大切です。
完璧に仕上がったら新しい素材に挑戦し、同じようにたくさん繰り返してください。
数カ月もやっているうちに必ず効果は出てきます。
シャドーイングに普段から取り組むには、それなりの時間を確保しなければなりません。
学校に通いながら、仕事をしながら、日常生活に訓練を取り入れるのは案外大変です。
そこでシャドーイング時間を確保するための工夫として「ながらシャドーイング」という方法があります。
通勤しながら、家事をしながら、仕事休憩しながら、お風呂に入りながら、散歩をしながら、車を運転しながら・・・
など、文字通り「何かをしながらシャドーイングをする」やり方で、スマホとイヤホンがあればかなり多くの場面に取り入れることができるのでおすすめです。
電車の中など人目が気になる場所もあると思いますが、そんなときはぼそぼそ口を動かすだけでも構いません。マスクをしていると口元が見えないので、あまり恥ずかしがらずにできるかもしれませんね。
日常生活の中に隙間を見つけて、1分でも多く、できれば1日に合計1時間~2時間程度のシャドーイング時間を確保できるようにしましょう。
シャドーイングに慣れてくれば、より負荷をかける「タイムラグシャドーイング」にチャレンジしてみましょう。
これは聞いてから言うまでの時間を開ける方法です。
音声を再生して、わざと少し時間を開けてシャドーイングします。
時間を開けることで、聞いた英語をその時間分覚えておかなければならなくなるため、脳にかなりの負荷がかかります。
1秒開けるだけでもかなりしんどいと思いますが、この取り組みによって英文そのものを覚えやすくなるメリットもあります。また、まとまった量の英語(1秒なら1秒分の英語)を聞くことで、英語をまとまりとしてとらえる力にも繋がります。
懸命に繰り返してもなかなかうまくいかないこともあります。
その場合には、素材の英文がご自身のレベルに合っていない可能性が大。
「これは自分には難しい、いつまでも上達できそうにない」と思ったら、その素材は一旦置いておき、もっと易しいものに変えることも大切です。
やがて慣れてきたころにもう一度挑戦して、いずれできるようになればOKくらいのつもりで臨みましょう。
継続は大切ですが、無理は禁物です。
次に、シャドーイングにおすすめの教材をご紹介します。
■「新ゼロからスタートシャドーイング 入門編」(Jリサーチ出版)
英語初級者向けのシャドーイングテキストです。一般的にシャドーイングは「文」を用いておこないますが、この教材は英語初学者のために、「単語」のシャドーイングからできるようになっています。
単語のシャドーイングが終わると今度は文単位でのシャドーイングになりますが、そこで使用する文が文法項目ごとに分かれており、シャドーイングしながら文法を一つずつ身に付けるというコンセプトになっています。文法学習と同時進行されるとより高い効果が期待できるでしょう。
易しい英語で1日10分から始められるので、まずは英語の基本と触れ合い、気軽に取り組みたいという方におすすめ。
■「究極の英語学習法 K/H System(入門編)」(アルク)
先ほども少し触れましたが、筆者が愛用していたシャドーイング専用教材がこちら。
8分程度のスピーチが収録されているのですが、ただ普通に全文をシャドーイングをするだけでなく、意味のまとまりごとに読んで理解したり、一定の長さで切れてそのパートだけを読み上げたりするなど、いろいろなアプローチで訓練できるように工夫されています。
ただタイトルに「入門編」とありますが、実際にはビジネス内容で、中上級者向けの高度なものですので、初級者の方にはあまりおすすめできません。
またこの教材の収録音声のユニークなポイントとしては、言い淀みや言い直しなど、完璧に出来上がった原稿としてではなく、実際にナレーターが自分の言葉として発言しているリアル感がとてもナチュラルで面白いです。これをマネすることで、実際の会話のような話し方が身に付きます。
ちなみに、筆者は主に車の運転中にこの教材を使用してシャドーイングをしていました。3年以上使いましたが、いまだに英文も内容も覚えています。
■「速読英単語 必修編」(Z会)
大学受験用の単語帳として有名な通称「速単」は、「必修編」には重要単語約1900語が収録されています。そしてこの教材最大の特徴が「単語を文章の中で覚える」という仕掛けです。
そしてストーリーを読みながら単語を覚えることに加えて、シャドーイングをすれば一石二鳥以上の効果が得られます。「必修編」の語彙レベルは少し高めなので中級レベル以上の方におすすめ。初級者の方は基本単語が収録された「入門編」や「中学版」を利用されると良いでしょう。
■「英検2級 文で覚える単熟語」(旺文社)
通称「文単」は英検対策用の単語帳ですが、英検を受ける受けないにかかわらず重要な単語が収録されています。コンセプトは上の「速読英単語」と同様、文脈の中で英単語を覚えるというもの。当然、単語学習だけでなくシャドーイング用に使うことができます。
英検2級で高校卒業レベルですが、もちろん中学レベルの3級、高校上級以上レベルの準1級や1級の「文単」もありますので、ご自身のレベルにあったものを選択してください。
■ YouTube
市販教材ではありませんが、YouTubeは英語素材の宝庫です。個人的にはスピーチを検索して訓練や学習に生かしています。
おすすめは「TED」スピーチで、TEDはあらゆる分野の専門家や著名人、成功者などがその知識や体験、教訓を30分以内程度にまとめてスピーチするものです。英語字幕付きの動画がたくさんありますのでスクリプトにも困りません。
スピーチとしてもう一つ英語学習の鉄板なのが、故Steve Jobs氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチです。
約15分間と短く、内容が大きく3分割されているのでそのうちのどれか一つを使っても良いでしょう。英語的にも非常に分かりやすく洗練されており、中学や高校の教材でも登場することがあるほどです。
好きな映画やドラマを素材としたい方におすすめなのが「Netflix」。
動画配信サービスはいろいろありますが、中でもNetflixは英語学習にもっとも適していると言えるでしょう。
YouTube動画やNetflixなどの映像を使う場合には、とりあえず日本語字幕で内容を理解してから、2週目以降で字幕を付けて英語音声に集中すると良いでしょう。
Netflixを使った効果的な英語学習法やおすすめ作品は、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ところで、私たちは普段の生活の中でどれくらいの時間、言葉を喋っているか考えたことはあるでしょうか。
無口な人がいればおしゃべりな人もいますし、職業的に黙々と仕事をする人がいれば、学校の先生や噺家のように人前でたくさん喋る人もいます。
そのためかなり個人差はありますが、一般的に、人が一日のうちに言葉を発する時間の総計は、30分から多い人でも2時間程度と言われています。
一日24時間のうちのほとんどを黙って過ごしているわけですね。
このことが示しているのは、私たちは毎日せいぜい2時間以内の発話を通して、日本語であれ英語であれ、ネイティブとしてのスピーキング力を育んできたということです。
一日に1時間~2時間程度をシャドーイング(音読)に充てることができれば、発話の訓練時間という意味においては、ネイティブと同環境になるということです。
英語力を上げたい、英語を話せるようになりたいと考える人の中には、英語圏の国に行くことが最良の方法であると信じている人が少なからずいらっしゃいます。
でも想像してください。
いざ英語習得のためだと意気込んで外国へ行ってみたはいいものの、まだまだ乏しい自分の英語力でいったいどれだけの発話時間が確保できるでしょうか。
日本語ですら、日頃1〜2時間程度しか喋っていないことを考慮すると、それが英語となった場合、下手をすると数分程度のものにしかならないかもしれません。
これが果たして効率的な訓練と言えるでしょうか。
私がお伝えしたいのは、決して海外渡航がダメだということではありません。
日本語が遮断される外国では、日本よりも英語の強制力が高まるため、学習環境としてははるかに有益と言えるでしょう。
しかし、こと発話時間の観点からのみ言えば、わざわざ外国に行って非効率的な会話に時間を浪費するよりも、日本にいながらにして学習と音読の時間をしっかりと確保することは十分に可能で、またそうした方がはるかに効率が良いと言えるのではないか、ということです。
これは私自身のアメリカでの英語経験も踏まえてのことです。
相手がいったい何を喋ってくるのか分からない場当たり的な会話に臨むよりも、市販のCD付の教材を使ったり、繰り返しドラマや映画を観てシャドーイング素材にしたりする方が、特に初級者には理にかなったやり方と言えるのではないかと思っています。
「日本でも十分に英語力は鍛えられる」という私からの激励と思っていただければ幸いです。
主体的に、徹底的に訓練を積む決意を持って、英語力向上に臨まれてください。
いかがだったでしょうか。
単語や文法の基本的な学習を続けることは絶対に必要です。
しかしそれらの学習だけでは「分かる・知っている」のレベルから抜け出すことはなかなかできません。
英語学習に臨む方々の目標は、やはり「言える・使える」レベルにまで到達することのはず。
そしてそれを実現してくれる訓練法が、シャドーイングです。
いくら英語が好きでも、毎日続けることは大変です。
面倒に思うことも、しんどくてやめてしまいたくなることもあるでしょう。
しかし、日常で日本語を話すことが当たり前になっているように、シャドーイングによって英語を話すことも当たり前にしてしまえば、必ず継続することができます。
継続した先に、「使える英語力」を携え今とは別人になった自分がいることを想像し、それを楽しみに学習に取り組んでみてください。
ちなみに、シャドーイングには2種類あり、今回ご紹介したのはそのうちの「プロソディシャドーイング」というものです。
コンテンツ、つまり、「内容」や「意味」の理解に焦点を当てる「コンテンツシャドーイング」という方法もあり、そちらも「英語を話せるようになる」ために非常に有効な学習法ですので、合わせて実践してみてください。